自己破産とは
自己破産とは「債務者である個人が返済不能に陥ったとき、債務者本人が裁判所に破産の申立てをし、裁判所が債務者に対して破産を宣告すること」と、知るぽるとは定義しています。因みに、個人の自己破産は令和5年度の司法統計年報にて、70,589件(新受事件数)と前年より増加しています。
自己破産のメリットとデメリット
破産の申立てを行い、その後、裁判所が免責を認めますと、債務者は借り入れについて返済する必要が無くなります。これが、自己破産のメリットと言えます。
銀行等の金融機関から借り入れた資金の他、 クレジットカードの支払い、 奨学金、未払いの家賃等が免責の対象です。
その一方で、自己破産のデメリットは保有する財産を売却して、債務の返済に充てなければならないことです。保有する住宅や自動車等は売却し、債務の返済に充てます。また、公認会計士等の士業や公務員等、一部の職業につけないこと、住宅ローン等の新たな借り入れが難しくなることもデメリットとして考えられます。
なお、新たな借り入れが難しくなるのは、自己破産したことを、自己破産時の債権者(銀行やクレジットカード会社等)を通じて、CIC等の信用情報機関に登録されるためです。
CICの「自己破産の登録は何年間ですか?」では、「当社で保有するクレジット情報の保有期間は、契約中および契約終了から5年間です。」と記載があります。つまり、5年間は住宅ローン等の新たな借り入れは難しいと認識しておきましょう。
自己破産しても免除されない非免責債権とは
自己破産をしても免責の効力が及ばない(免除にならない)債権があります。免責の効力が及ばない債権を「非免責債権」といいます(破産法253条1項但ただし書き)。
「非免責債権」に該当するものは、必ず支払いを行います。以下に「非免責債権」について、説明していきます。
租税等の請求権(破産法253条1項1号)
税金や社会保険料等は免責の効力が及びません。以下の項目は支払いの義務があります。
- 所得税
- 住民税
- 贈与税
- 相続税
- 自動車税・軽自動車税
- 固定資産税
- 国民健康保険料
- 国民年金保険料
- 上下水道料金(水道料金は上水道料金(飲用可能な水)、 電気料金・ガス料金は自己破産により滞納している分の支払いが免除されます。)
破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(同2号)
悪意や重過失で発生したものは、免責の効力が及びません。この場合の「悪意」とは単なる故意ではなく、積極的な害意と考えられています。当該行為に基づき発生した損害賠償請求権は、自己破産しても支払いの義務があります。具体的に、以下の項目が考えられます。
- 飲食店等でわざと起こした迷惑行為
- 暴走運転で事故を起こした場合
なお、離婚や不貞行為の慰謝料は積極的な害意があるとは言えず、自己破産により支払いの義務が免除されるのが一般的です。
破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(同3号)
加害者への制裁という観点から非免責債権とされています。例えば、自動車を運転中、交通事故を起こし、歩行者に傷害を負わせたことによる損害賠償請求権等は非免責債権に該当し、免責の効力が及びません。
破産者が負担する親族関係に係る請求権(同4号)
親族間の扶養義務に基づく支払い、配偶者や子ども等の親族を扶養するために支払いは、破産したからと言って免除になるものではありません。以下の項目は支払いの義務があります。
- 離婚した元夫または元妻に対する養育費の支払い
- 夫または妻に対する婚姻費用(生活費)の支払い
養育費や婚姻費用について、公正証書や調停調書で取り決めしている場合は、原則的にその金額を払い続けなければなりません。
雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権・預り金返還請求権(同5号)
従業員の給料や退職金や従業員に対する預り金は非免責債権とされています。
破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(同6号)
債権者名簿(破産の申立て書類)に記載されていない債権は原則、免責の効力は及びません。
親族間や友人からの借り入れを債権者名簿に記載しなかった場合、当該借り入れは免責の対象となりません。なお、自己破産の際には全ての借り入れを明らかにしなければならず、隠した借り入れは免責の対象となりません。
罰金等の請求権(同7号)
罰金、科料、追徴金及び過料の請求権は、免責の効力は及びません。
非免責債権が支払えないときの対応は、基本的に相談
非免責債権が支払えない場合は、以下の対応が考えられます。
- 税金や社会保険料等は市役所等役に事情を説明し、分割納付について相談をする。
- 損害賠償請求権等は分割払いや支払期日の延長について債権者へ相談をする。
- 養育費や婚姻費用は、受け取る側に事情を説明して話し合いをする。直接の話し合いが難しい場合は、家庭裁判所に減額調停を申し立て、家庭裁判所が間に立ち、受け取る側と話し合いをします。
債権者には誠実な対応をしましょう。そうでないと、預金等の差し押さえや裁判を起こされる可能性があります。
自己破産をする場合は「非免責債権」があることを知る
自己破産は現在ある借り入れについて支払いが免除になります。そのことで、生活を立て直すこともできるでしょう。しかしながら、自己破産をしても「非免責債権」という免除にならない支払いもあります。
自己破産について、説明をしてきましたが、まずは借り入れは安易に行わないことを心掛けましょう。
もし、借り入れをしている場合は、金利が高い借り入れから優先的に返済していく、複数ある債務を金利が低い借り入れにまとめて返済していく、といったことも検討しましょう。
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