増加する「所有者不明土地」の問題の動向

 日本国内は高齢化が進んでいます。そのなか、「所有者不明土地」が問題となっています。

 政府広報オンラインによると、「所有者不明土地」とは「相続等の際に土地の所有者についての登記が行われないなどの理由により、不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地、又は所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない土地のこと」とあります。

 具体的には、以下のような状況の土地が考えられます。

  • 登記事項証明書と固定資産課税台帳の所有者が異なり、所有者を特定できない
  • 所有者の特定はできるものの、所有者の所在が特定できない
  • 登記事項証明書上の所有者はすでに亡くなっており、その相続人が何人か特定できない

 これらに該当する土地はまず、「空き家問題」との関連性が考えられます。

 老朽化が進み、倒壊のおそれがあるような空き家があれば自治体が所有者に連絡し、修繕や有効活用を促すことになりますが、土地・建物のいずれも所有者が分からないと、連絡が困難となります。これは、「空き家問題」への解決の妨げとなると言えます。結果、建物は長期間放置され、老朽化がさらに進み、修繕などの費用もより多くかかることが考えられます。

「所有者不明土地」問題の要因

 「所有者不明土地」問題を発生させる要因として考えられるのは、相続登記(相続による所有権移転の登記)が適正になされていないことです。

 通常、土地の所有者についてはその土地の登記事項証明書によって確認します。しかしながら、相続が発生しても、相続人が相続登記を行っていない場合があります。

 2024年3月31日までは相続登記が義務ではなかったため、既に亡くなった被相続人が登記事項証明書上で所有者のままとなってしまい、実際の所有者の把握が困難となっていました。

 「登記をしなくても特段支障が無い、困らない」という状態が、相続登記が行われていなかった理由の一つだと考えます。また、登記手続き費用は土地の資産価値にかかわらず発生し、相続登記のための費用が土地の資産価値を上回ってしまうこともあります。登記費用の相対的な高さも、登記が行われない理由とか考えます。

 「所有者不明土地」問題を生じさせるその他の要因として、土地所有者情報の非一元化もあります。登記事項証明書以外の土地所有者情報は、固定資産課税台帳、国土利用計画法による届出、農業台帳などがありますが、これらの情報は所管する官庁が異なり、情報も一元化されていません。

 そのため、実際の所有者が登記されていない場合、他の情報に照会を実施しても、実際の所有者の確認には時間を要することに繋がっています。

 情報一元化に向けての改善の必要性は高いと考えますが、ほとんど進んでいないのが現状です。

 一般財団法人「国土計画協会」所有者不明土地問題研究会による「平成28年度地籍調査」を活用した国土交通省の推計では、全国の所有者不明土地の割合(対全土地)は20.3%とし、九州本島の土地面積約367万haを上回る約410万haに相当するとしている。

 今後も現在の状況が続くと、2040年の所有者不明土地は約720万haとなり、北海道の土地面積約780万haに近づく。

 所有者不明土地による経済的損失には、①利活用する場合のコスト・損失として、土地所有者を探すためにかかる時間や費用や機会費用(早く利活用できていれば得られたであろう利益の損失)があり、また、②管理コスト(樹木伐採のための費用)や③税の滞納による税収減などがあるが、同研究会によると、2016年単年の経済的損失が約1,800億円で、2040年までの累積で約6兆円以上になると見込まれている。

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